徒然、散文集

読書記録や日々の記録など。

毛髪が乏しい天使

わたしが働く障害者支援施設には、天使がいる。

 

天使は人間界に紛れ込むべく、身長150センチ程度の60歳男性の姿をしており、毛髪は乏しく痩せており、前職では警備の仕事をしていたが周りからは

「仕事ができない」と散々言われていたそうだ。

今はパートで支援員として働いている。

 

気の強い、どこにでもいるようなパートのお局様にどやされても、利用者がいうことを聞かなくても、天使はヘラヘラといつも笑っている。

 

そしてわたしと目が合うと、「大丈夫ですかぁ、続けられそうですかぁ」とまた笑う。

わたしはそれを聞くと嬉しくなるので、「なんとか、まあ、ギリギリ」と力無く笑い返事をする。

 

天使はお酒が大好物らしい。

「お酒をたくさん飲むこと!」と満面の笑みで教えてくれる。

良いのか悪いのか、全く飲まなかったお酒を1人で飲むようになったのは天使の影響だ。

 

わたしは幼稚で、気の強いお局様に何か言われた時には態度に出てしまう。

返事が小さくなり、表情が曇る。

 

天使はわたしより先に入ったのに、わたしより意味のわからないことでみんなの前で大声で怒られている。

それでも、満面の笑みで、「はいっ、すみませんでしたぁ」と自分より20歳も下の女性に頭を下げて返事をする。

わたしはいつも泣きそうになる。

 

かわいそうだからなんて簡単な話じゃない。

本当に心が綺麗な人間と出会うと、感動するものなのか、と30歳を過ぎて初めて思う。

これは間違いなく、畏敬の念というやつである。

 

本当に格好いい大人とはなんだろうか?

見た目が良くてお金持ちで地位があって...

 

もちろんそれも努力の賜物であるし、憧れる。

 

この年までいろんな人と出会ってきた。前職はベンチャー企業で、地元の大企業の社長たちと話す機会にも恵まれた。社長たちはオーラがあった。同じ人間なのに尻込みしてしまう何かがあった。修羅場を潜った人にしか纏えないオーラがあった。

 

天使から受けた感動は、質が違う。どちらがいいとかではないけど、

 

わたしは、本質を知りたい。

人間的な魅力の本質ってなんだろう?

 

天使は今日、「目が悪くて薬があげられないから、夜勤入れないんだ、お給料が違うよねぇ」とため息をついていた。

天使が夜、夜勤なんて入らずに、好きなだけお酒を飲んで幸せに眠れるように願う。

毛髪が乏しいので、頭のてっぺんで毛がぱやぱやと踊っていて、なんとも愛らしい雰囲気がある。

心の中で、「天使、毛髪が乏しい」といつも思っている。

 

自分が目指す人間像は自分の主観でしか決められない。

わたしも60歳になったら、天使に見えるようになれるだろうか?

毎日、人間界で修行を重ねよう。